わたしは貝になれない

人生の偏差値50

海底の墓場へ

大学生の時、広島に旅行した。二泊三日。

8月の初めでとても暑かった。

 

原爆資料館を見て回った後、案の定陰鬱な気分になった。

直ぐに街をぶらつく気分になれず、平和記念公園の片隅に腰掛けてぼーっと空を眺めていると、チャリ乗った裸の大将みたいなオッさんが今日は暑いね〜、たまらんね〜!と話しかけてきた。

観光客なのか問われたので頷くと、

「今の時期は一番暑いから広島は。もうちょっと経ったら凪になって、もっと暑くなる。」

再現出来ないが、バリバリの広島弁だった。オッさんはそれだけ言うとまたチャリに乗って去って行った。その日は雲一つない晴天で、気温の高さもさることながら、平和記念公園って真っ白だから照り返しもあってめちゃ暑かった。

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こりゃ全然休まらんな、どっか喫茶店でも入って涼んだ方が良いなと腰上げようとすると、コンニチハ〜!とまた声かけられた。広島の人フレンドリー過ぎる。

今度は裸の大将じゃなく、金髪のお姉さん2人組。外人さんでした。

「聖書、ヨンダコトアリマスカ?」

宗教の勧誘だった。

 

自分の実家は真言宗で、信心は全然ないのだが密教特有のダークな感じがなんか格好良いし、空海が今も高野山の霊廟で瞑想してて僧侶が毎日給仕してるってエピソードも漫画みたいで堪らんなと思っているので、残念ながら改宗は出来ない。

でも何の宗教でも信心深い人は親切な人が多いので、話聞くくらいのことは嫌がらずにしている。

日曜の昼から居酒屋行って良い感じのホロ酔いになった後、アパートで腹出してシエスタしてる時にピンポンされたとしても、一応はちゃんと話しを聞いている。それに、いつも邪険にされてるからか話聞いてあげるとスゲー喜んでくれるんだよな。なんか自分も嬉しくなってしまう。

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あと、ああいう人らって薄い冊子くれるじゃない。あれも好きだ。一旦は靴箱の上あたりに放って置くのだが、掃除の時とかにあ、そういやこんなもん貰ったなって気紛れにパラパラめくってみると、モーゼが海割ってるシーンなどがとんでもない熱量で描かれてたりして見入ってしまう。

 

なので、金髪のお二人の話もちゃんと聞きました。そしたら、気を良くしたのかニコニコ顔で

「ココノトコロ、ヨンデミテクダサイ。」

と分厚い聖書差し出された。予め蛍光ペンで囲まれてる箇所があったので黙読しようとすると、

「チガイマス、声ニダシテ。」

と手厳しい。いや声に出すのはちょっと…と躊躇したが嫌とも言えない雰囲気だし、断って2人の顔を曇らせたくなかった。

仕方なくボソボソ読み上げると、開始2秒くらいで

「モットオオキナ声デ、ヨンデクダサイ。」

と注意されてしまった。国語の先生かよ。自分は別に朗読が苦手ではないが、クラスに一人二人いたでしょ、つっかえつっかえ人の何倍も時間かけて読んでる奴。自分がそんな奴だったらコレ一生終わる気がしない。長いんだよ。「春はあけぼの」の5倍はあるからコレ。

とも言えず…。

文句言われないように今度は大声で読み上げました。恥ずかしかった。自分は旅先で一体何をしているのだ。猛暑のせいか周囲に人気がなくて助かった。これがエゼキエル書25章17節だったら、昔パルプ・フィクションのサントラ持ってて暗誦できたのにな…(格好良いと思って超練習したから)。全然関係ないけど、ブレードランナーのあの「お前たち人間には信じられないものを私は見てきた云々」っつーとこも昔超練習したな。だって格好良いから。

youtu.be

youtu.be

そんなことをつらつら考えながらやっとの思いで読み終えると、

「ツギハ、ココヲヨンデクダサイ。」

とページめくられたから流石に驚いたね。 

 

金髪のお二人の感激っぷりと言ったらなかった。

「コンナニ、真剣ニ、ヨンデクレタノハ、アナタガハジメテデシタ。」

だろうよ。言っちゃ悪いがもうちょっとやり方考えた方が良い。自分のように好意的と言うか酔狂な人間もなかなかいないでしょうから。

鞄の中ゴソゴソしてっから、お、例の冊子くれんのかなと思ったら、装丁もガッチガチの分厚いモルモン書を一冊プレゼントされた。

「ココニカイテアルノハ、ワタシノ電話番号デス。イツデモカケテキテクダサイ。デルノハワタシデスガ、神様ニツナガル電話デス。神様トハナシテイルトオモッテクダサイ。」

と、去り際に名刺も貰った。

私が電話に出るって言ってんのに神様と話してると思えってのも恐れ多くないか?という疑問もあったが、もしかして自分がこの先滅茶苦茶弱ってしまうこともあるかもしれないな、そん時に忘れてなかったら電話してみるか、と貰ったモルモン書の間に名刺挟んで持ち帰った。トランクの中身圧迫してクソうざかったが、こういうの捨ててくのも気が引けるし。

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で、実家に置いといたら、数年後に置いといた実家ごと津波で流されたんで、まぁ、あなた達の神様にはご縁が無かったと言うことで…。

 

流されたとは言っても跡形もなく海の藻屑となったわけではなく、200mくらい離れた地点に家の二階部分だけ流れ着いていたもんで、周囲に家ん中の物が散乱してたらしい。

そこで、良かれと思って近所の人らが泥だらけになった大学の学位記やら何やらを拾い集めてくれたのだが、鬱屈した思春期の内情を赤裸々にぶつけた当時の日記や、件のモルモン書などがもしかしたら白日の下に晒されたかもしれないと思うと、居ても立ってもいられなくなる。

米山さんのとこの子は山田かまちではありません。改宗もしてません。

どうせなら全て海の底に沈んでくれれば良かった。

夜は海底の墓場のピアノを想い  その上をただよう自分の姿を見る

海底はあまりに静かで  私は眠りに誘われる

不思議な子守唄

そう  私だけの子守唄だ

音の存在しない世界を満たす沈黙

音が存在し得ない世界の沈黙が

海底の墓場の  深い深いところにある              「ピアノ・レッスン」より

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映画とは違い、詩的に終わらせてくれない現実の生々しさよ。

 

 

白滝の翁

自分という人間は、ゾンビ映画だったらオープニングで噛まれてゾンビ化し主人公の運転する車を追いかけ、異能力バトル漫画だったら普段は普通の高校生である主人公の秘めたるパワーを目の当たりにしてワナワナ震える、そんなモブの中のモブ。

電車乗ったら同じ車両に3人くらいいるような見た目な上に趣味はありがちな読書と映画鑑賞だし、日本人に一番多いA型である。

満員電車乗りたくないから一本見送ったり、仕事終わりにビール飲んでこの一杯の為に生きてる!と高まったり、エレベーターで開ボタンずっと押してあげたのに降りる時に会釈してくんない奴なんなの?と2秒で終わる憤りを日々抱えたりしている小市民である。

いつもあなたの隣にいる。

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勝新と玉緒は平凡ではない

とは言え、平凡な自分を受容するにも紆余曲折あった。

「他の人間とは違う独自の感性を持っている」という誰もが一度は抱く誤った確信の赴くままに、通ぶって古い洋楽聴き始めてよく分かんねー癖に人に勧めたりして苦笑いされて「変わってるね」なんて言われたらも〜うその言葉待ってました!とばかりに、そうそう!変わってるってよく言われるんだよな自分じゃ分かんないんだけど〜(汗)と早口で捲し立てる、そんな思春期を送った末に、後年その時期の言動をふと思い出して瞬間的に羞恥心がメーター振り切っちゃってあああああ!(自分)死ね!って声出さずにいられなくなる。

その全てが平凡だということも、今は理解している。

 

 

ところで、昔「危ない1号」ってアングラ雑誌があった。

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薬物とか人体改造とかパリ人肉事件の佐川一政の手記に村崎百郎がゲスな対訳つけたやつ等々が載ってて、3〜4巻出しただけですぐ廃刊になってしまった記憶がある。

「独自の感性を持っている」と勘違いしてた思春期の頃にこれは!と思って購入した。当時は「日本全国のゲス野郎に捧ぐ脳天爆裂ブラック」というキャッチコピーに青い感性がビンビンに刺激されたが、これ程ダセーキャッチコピー中々ないだろと今は思う。

初カキコ…ども…
俺みたいな中3でグロ見てる腐れ野郎、他に、いますかっていねーか、はは

今日のクラスの会話
あの流行りの曲かっこいい とか あの服ほしい とか
ま、それが普通ですわな


かたや俺は電子の砂漠で死体を見て、呟くんすわ
it'a true wolrd.狂ってる?それ、誉め言葉ね。


好きな音楽 eminem
尊敬する人間 アドルフ・ヒトラー(虐殺行為はNO)

なんつってる間に4時っすよ(笑) あ~あ、義務教育の辛いとこね、これ

ネットでよくみかける彼のことを全然笑えないのである。

要するにただの中二病だっただけであり本来アングラ方面には全く興味ないので、パラパラめくってすぐに飽きてしまった。

 

ただ、「アナル弄り続けて60年」みたいな大正生まれの変な爺さんのインタビューだけは興味深く読んだ。爺さんの生い立ちから何故アナル弄りに興味を持ったか、今までどんなプレイをしてきたかetc。

詳細は覚えてないが、確かアナル愛好家達の祭典(何それ)が催された際、アナルを使った芸を披露する大会?的なもんがあり、爺さんはそのステージで観客に尻を向け、アナルにクスコ挿して白滝を注ぎ込んだ。その後クスコを抜くとさながらアナルから華厳の滝のような美しい滝が流れてるように見えるっつー芸で、観客の喝采を浴びたと言う。

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若い人達が馬鹿デカいバイブ突っ込んだり肘まで腕突っ込んだりする中、爺さんの芸は際立って美しく品があったとのこと。(品とは…)

世の中は広いですね、と思いました。

 

 

 

以前、立ち飲み屋で隣同士になった女性。

背が高くて金髪で腕に厳つい墨入ってるから、女子プロの人?と思ったのだが、女王様だそうだ。もう20年以上やっていて、その界隈では割と有名な人らしい。

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彼女は言うなれば高級女王様であり、プレイするには結構な金額を要する。故に、医者や有名会社の重役など社会的地位の高い人間が主な顧客だと言う。

 

そんなエリートである顧客の一人に、女王様に虐められたいが為に毎回少女漫画ばりのドジかましてくるオッさんがいるらしい。

プレイ中に、縄取ってこい!とオッさんに命じたら、分かりましたっ!って取りに行く途中に絶対わざとコケて反応伺ってくるから、

「テメェ何コケてんだよ!」

と仕方なく毎回ブン殴る。

それに味しめたのかプレイ中ならまだしも外でもかましてくるようになり、駅で待ち合わせして「今日はよろしくお願いします!」ってオッさんが頭下げた時、胸ポケットにペンを大量に入れてるもんだからボロボロって全部落ちて散乱し、ハゲ頭晒して「ああっ!申し訳ありません!」って焦ってたけど完全にわざとだからスゲー腹立ったと。

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女王様業も大変ですね、と思いました。

 

と同時にふと危ない1号のことを思い出して、昔こんな雑誌に変な爺さんが載ってましてね、と女王様に伝えたら、なんと顔見知りとのこと。

「知ってる知ってる!白滝のジジイ!あいつしょっちゅうそれやってんだよ〜。」

と呆れ顔で仰ってましたが、自分はなんか「繋がった!」という感動があった。

何の接点も無い田舎の中学生と都会の女王様が、中二病故に手に取ったクッセぇアングラ雑誌に載ってた白滝のジジイを介して、今ここに繋がったのである。素敵やん。

いや別に繋がるとこは他にも探せばあるかも知れないが、白滝のジジイで繋がるっていうのが凄くないですかと。そういうことです。

 

 

恥の多い生涯を送ってきました。今となっては中二病も青春の一つの形であり、そう悪いもんでもないなと思える。平凡な自分を痛い程に自覚している今だからこそ、ですね。

ただ、自分が思春期の時にSNSがなくて良かった!そこは本当マジで!

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地獄!

 

おわり

そのTシャツはユニクロですらなく

10代の頃は人並みに宝島社あたりから出てる雑誌読んで、1時間強鈍行列車に揺られて仙台フォーラスまで行った挙句に奇抜すぎる原色レインボーカラーのパーカー買ったりした時期もあった。

地元はハラジュクでもシモキタでもない肥臭い田舎で、タワレコも古着屋もヴィレッジヴァンガードもスタバもない。もっと言えば牛丼屋すらない吉幾三の世界で生きている。

そんじゃその服どこに着てくのってなったら、仕方ないから家の前の農道をブラブラするしかなく、畑でゴミ燃(も)してる近所の婆さんに指差されるのである。

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今は本当に服装なんてどうでも良いと思っている。

「あんたその汚いダウンジャケット、高校の時から着てるんじゃないの」

と母親からゴミ虫見るような目で言われたり、コレあんたに買って来たからと渡された変な猫みたいな名もないようなキャラ描かれてるTシャツを有り難く装備し、平気で駅前のドコモショップまで行って機種変更したりしている。

そのドコモショップ、「対応に満足いただけたらスタッフに渡してください」と小さい造花のチューリップがカウンターに置いてあったので、懇切丁寧にiPhone5sの説明してくれたお姉さんに「親切にありがとうございました。コレどうぞ」つってプロポーズの作法で両手でチューリップ持って渡した。

変な猫描いてあるTシャツ着てる奴よりはタキシード着てる奴に花渡された方がお姉さんも嬉しいだろうが、タキシード着て機種変しに行く奴もいないだろうし、ともあれ襤褸は着てても心は錦の精神でやっている。

 

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ドラマでも、武田鉄矢がヨレヨレの作業着で101回目のプロポーズした後、工事現場に落ちてたナットを指輪に見立てて浅野温子に渡していた。

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「僕には、何もありませんよ。貯金もありませんし、会社も辞めて、今はもうみっともない中年のしょぼくれオヤジです。(司法)試験にも落ちて、あなたの言う通り変われなかった駄目な男なんですよ。それでも…。」

「…私を、もらってください。」

VOWに載ってて死ぬ程笑ったのだが、武田鉄矢が司法試験目指してんのに司法書士試験の参考書を3日寝てないみたいな血走った眼で読んでたので(そら落ちるわな)、「僕には何もありません」という台詞も俄然真実味帯びてた。弟役の江口洋介も兄ちゃん頑張って!の顔してるとこ見ると、兄弟揃ってポンコツかよどうしようもねえなといった感じがあった。VOW - Wikipedia

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それでも良いって浅野温子は言うんだから、外見なんて構わないポンコツでもなんぼのもんじゃい、大事なのは心(ハート)なのよ。

 

 

101回目のプロポーズ武田鉄矢じゃないが、自分も大学時代は法学部に属していた。

ある日、友人に誘われるがまま、法学会が主催する府中刑務所見学会に参加希望の申し込みをした。

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事前に、受刑者を刺激するような髪型服装は厳に慎むようにとの通告がなされた。要するに個性殺した就活生みたいな格好して来いということで、自分もリクルートスーツ着て黒縁眼鏡(非おしゃれ)かけて行くことにした。

前日の夜、鏡で自分の姿見てみるとこんな格好もなかなか悪くねーじゃんという気がした。

 

当日。

普段はスニーカーとサンダルくらいしか履かないので、行きの電車乗ってるあたりからヤバい気がしてたが、刑務所内に一歩足を踏み入れた時にはもう靴擦れが限界まで来ていた。皮ベロッベロに剥けてた。どうか土足厳禁であってくれと一縷の望みを託していたが、スリッパに履き替えることもなく、見学が始まってしまった。

 

職員の後に学生がゾロゾロついて、雑居房、懲罰房、単独室、作業所と逐一説明受けつつ見て行くのだが、職業病なのかなんなのか知らんけど職員の足が速過ぎるんだよ。特に作業所は実際に受刑者が作業してるから顔を見ないように決して立ち止まらないようにってことで、競歩ばりの速さで進むもんだから自分だけどんどん置いてかれてしまった。

府中刑務所ってB指標受刑者(刑務所に入るのが2回目以上の者や暴力団関係者)と外国人受刑者ばかり集めた刑務所だってことを事前に聞いていたのだが、そんな人らが沢山いる場所に1人取り残されそうになったもんだから滅茶苦茶ビビってしまい、ええいままよ!と靴を脱ぎ、「北の国から」で電車追いかけてる時の蛍みたいに必死に走った。

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やっと追いついて肩で息してると

「ちょっとちょっと、裸足ダメ!何やってんの!」

と滅茶苦茶怒られてしまった。すいません靴擦れが酷くて…と訴えると、なんだそれなら早く言ってもらわないと、と言って、どっかから上履きを持ってきてくれた。

「コレ履いて。」

と渡された便所用みたいなサンダルには、「出廷用」と黒マジックで大きく書いてあった。

 

痛みから解放されると心も凪いで、そこからは穏やかな気持ちで見て回ることが出来た。

その日は丁度運動会の日だったので、外の運動場では工場対決の綱引きが催されていた。

外国人受刑者の1人が前で綱引いてた受刑者に若干キレてて(ジェスチャー見る限り多分足踏んだかなんだかで)、それ見てたら声には出さないがすげー笑えた。怒ったとこでそれ味方のチームだから。

そんな自分もビシッとスーツ着て神妙な顔してんのに足元は出廷用サンダルだし、人のこと笑ってられないのだが。

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見学後。

府中刑務所の近くにあった刑務所作業製品展示場で渋いブックカバーを購入し、ほくほくしながら帰路に着いたのだが、忘れていた靴擦れがまた酷いことになってきたので、靴脱いで歩道の縁石に腰掛け、一旦休憩することにした。

ついでに行きにコンビニで買って鞄に入れっぱなしにしてたおにぎりを食べてたら、なんか惨めな気持ちになってきてしまった。

慣れない格好するもんじゃないな…でもそろそろ就活本腰入れないとな…働き始めたらずっとスーツ着なきゃならんのか…格好良いブックカバー買ったは良いが本読む時間あるかね…

そこからは覚えてないが、タクシー使う金なんて無いしどうにかこうにか休み休み帰ったんだろうと思う。

 

 

要らん心配しなくても、お前は就活に失敗して卒業した後に3年間専門学校に通うことになるし、スーツとは一生無縁の職業に就くことになる。ビシッとした格好なんてすることは全然なく、母ちゃんが買ってきた変な猫みたいな名もないようなキャラ描かれたTシャツ着て、平気で街を歩くような社会人になるのだから。そのブックカバーも現役で使用しているぜ。終

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良くね?



きみはコンビニの妖精

新居決める時に、最寄りのコンビニまでどのくらいかかるかってのは重要です。

特に自分のように呪われた人間は、深夜に煙草が切れてるのに気付いてハァ面倒だけど買いに行くかと重い腰上げて自販機まで行って財布開いてみたら万札しか無かったとかそういや飲み屋でアイツにtaspo貸したけど返ってきてねーじゃん!とかよくあるんで。

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夜の止まり木

別に喫煙しなくても夜中にからあげくん食べたくなったり今日まで払わんとガス止められるとか切羽詰まったり詰まらなかったりする理由で、本当にコンビニ様にはお世話になっています。

とてもじゃないけど、足向けて寝れませんね。

 

自分の中で一番好きなコンビニはセブンイレブンなのであるが、と言うのも今はもう無い実家の最寄り(チャリ全力立ち漕ぎ15分)のコンビニが国道沿いのセブンイレブンだったのでヒヨコのインプリンティング的に一番好きってだけで、結局は何でも良いんです。近いとこにあるコンビニがその時一番好きなコンビニになる。

デイリーヤマザキだって自分は全然構わない。田舎のデイリー入ると、ロリ+ハードSMというかなり読者層が限られる系統の成人指定漫画をまるでバガボンド売るみたいな気軽さで陳列棚に置いてたりするから度肝抜かれるのだが、店主の歪んだ性嗜好は脇に置いといて、「他店に無いものを!」という気概だけは強く感じられるので。頑張って。

 

 

 

「あなた、コンビニが好きなんだね!しょっちゅう行ってるもんね。」

学生時代、ある女性から言われた。

学校の目の前にあるもんだから空き講義の時間とかにまるソー(まるごとソーセージ)買いに行ったりするくらいで、一般的な利用率なのだが…と少々面食らっていると、

「私は買い物は殆どスーパーで済ますから、滅多にコンビニに行かないんだ。」

と言う。堅実ですね。いつも水筒持参してるし。実家が資産家らしいのに、しっかりした金銭感覚を持っている。

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学生の味方

そんな彼女が珍しく足繁くコンビニ通ってる時期があったので理由を聞いてみると、ビックリマンチョコの復刻版を買いに行くと言う。小さい頃テレビでやってたビックリマンがめちゃ好きだったそうで、

ヘッドロココ様のシールが出るまで買うの!」

と鼻息荒い。ヘッドロココ様って何のこっちゃだけど、可愛いとこあるじゃない。

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ヘッドロココ/聖フェニックス - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

変身する以前の名前は『聖フェニックス』悪魔の攻撃による荒廃により、次界を目指す意識が生まれる中で『天聖界』に誕生した、次界創造主と呼ばれる新たなヘッドだった。」

(調べてみてもなんのこっちゃでした)

 

常に化粧気がなく地味な眼鏡をかけ四角い額丸出しのひっつめ髪で、簡単に言うと原発反対デモでプラカード掲げてそうな見た目なのだか、それを差し引いても良い奥さんになれるだろうなと思ったし、実際卒業してすぐになんと交際3ヶ月のスピード結婚していた。写真見せてもらったら、木野花から黒木華に変身した彼女がウェディングドレス着て最高の笑顔してたので、良かったね!と本心から思った。

交流ないから分からんけど、今頃子ども一人二人くらい産んでるだろうな。セブンで言うところのとろりんシューみたいな、所謂限定スイーツを子どもから強請られることも時にはあるだろうし、今は渋々コンビニへ行ったりしてるのかもしれない。

 

どんな話の流れだったか忘れたが

「私、ニコ中だから〜」

って彼女が言ったのでふぅん意外タバコ吸うんだねと思ってたら、ニコ中ってニコチン中毒の略じゃなくてニコニコ動画中毒の略だと卒業後に知って、数年越しのアハ体験した。余談。

 

 

 

 

以前住んでた中野のアパートの最寄りのコンビニ、新居周辺を散策していて見つけた時はセブンじゃなかったなーんだ…とほんの少しがっかりしてしまったのだが、すぐ大好きになった。

徒歩10分もかからずに行けて勿論24時間営業で酒もタバコも扱ってるし、何よりここには可愛くて感じの良いてらいさん(仮名)って店員がいる。

 

てらいさんは宝生舞に似てて眉毛に強い意志が感じられる美人だ。なのに声が少し舌足らずなとこがアンバランスな魅力を醸してて、長年コンビニバイトしてるのかレジ捌きも早いし最高だったのだが、滅茶苦茶話しかけてくるタイプの店員だった。

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初めててらいさんを見た時も、野球部っぽい坊主の中学生に

「これ(アメリカンドッグ)いつも買ってますよね〜。大好きなんですね!」

と話しかけていた。止めてあげて欲しい。

「あ、はい…。」

って中学生も恥ずかしそうにしてっから。いつもアメリカンドッグ部活帰りに(多分)食ってるのを知られちゃってて剰えそのことに人前で言及されてしまうなんて、大人なら別に気にしないけどそういうどうでも良い事に拘泥して羞恥心感じてしまうのが思春期の常だから。でもてらいさんはそんな空気決して読まない。声もめちゃデカい。無邪気の人である。

もしかして中学生と知り合いなのかと思ったが、何度か通ううちに単にそういう人なんだと分かった。

 

「今日はお仕事休みなんですか?」

「今、雪降ってますか?」

「今日はビール買わないんですね!」

美容院ばりに話しかけてくるしビールについてはやかましいわという感じだが、笑顔に邪気がなくて憎めない。

「その財布カッコいいですね〜」

と言われた時は数日前に財布を新調したばかりだったので、よく見てんな…と少しゾッとはしたものの、格好良いと言われて悪い気はしなかったので、ありがとうと伝えた。

 

またある日、会計がちょうど777円になって、お、と思っていると

「ゾロ目でーす。」

と茶目っ気たっぷりに言われた。嘘だろ。可愛すぎる。

なんと返していいか見当付かなかったので本当だねの意を込めて笑うと、てらいさんも笑顔で頷いてくれた。心に残る平和な情景だった。

ここまで来るとてらいさんのピンフな接客にも慣れて、と言うかもう待ちわびてしまっている自分がいた。

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ゾロ目でーす

 

職場を退職するに伴い住民税か何かの振り込みをしなければならず、振り込み用紙握りしめて件のコンビニへイライラしながら向かい、レジで金払う段階になってなんでこんなに高額なんだよこれから何かと物入りなのに鶏ガラから鶏油搾り取るみたいな真似しやがって畜生!とイライラがピークになり、普段は絶対にしないのに

「やってらんないっすよ、こんな何万も税金取られて。」

と思わずボヤいてしまった。その時はてらいさんじゃなくて無愛想で仕事も激遅の恐らくオーナーの奥さんがレジやってたので、

「はぁ…そうですね…。」

と目も合わさずにコレよ。くそったれ。

突然知らんやつのどうしようもないボヤき聞かされて奥さんもキ◯ガイ来たと戸惑ったに違いないが、これがてらいさんだったら…と思いを馳せずにいられなかった。

 

当時のアパートは暗渠を整備した遊歩道沿いにあった。その遊歩道は新宿から杉並の方まで続いていて、中野から歩いてって高円寺入ると明らかに杉並区側の方が掃除も行き渡っていて綺麗なのが普段から不満だったのだが、振り込みした帰り道にその遊歩道歩いてると、どこに血税使ってやがるんだよと更なる怒りが湧いてきたのを覚えている。

あの時てらいさんに対応してもらってたら、もしかしたらこんな遣り場のない憤りを抱えて帰路につくこともなかったかもしれない。

いやどうだろう。それはそれ、これはこれ、かもしれない。

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引っ越してから一度だけ、件のコンビニの前を通りかかったことがあった。

てらいさんはいなかった。辞めたのかもしれないし、その日たまたま休みだっただけかもしれない。もしくはバックヤードで廃棄弁当食ってただけかも。

別にあのコンビニはオーナー夫婦が感じ悪いから辞めてても良いけど、どっかのコンビニで元気に働いてて欲しいな。

 

きみときみが働くコンビニに幸あれ。

バナナケースのレゾンデートルについて

透析施設に勤務していた。

ベッド数50患者数150人程で、忙しすぎず暇すぎずのまぁまぁの規模だった。大汗かいてバタバタ走り回ることもあるが、休憩室でダラダラ菓子食いながらヒルナンデス観てる時間もある。緩急ある仕事はやり易い。だもんで、スタッフ同士もまぁまぁ仲良い。給料は多すぎず少なすぎず、こんなもんだろうなといった感じ。

専門学校生時代に実習した先の病棟や、大学時代のバイト先などを振り返ってみると、「まぁまぁ」な職場ってのは貴重で得難いものなんだなと実感する。

 

 

 

実習先のS医療センター呼吸器外科病棟、今でも思い出すと滅茶苦茶腹立ってくる。

多忙なのは同情するが、挨拶無視が当たり前ってどうなのか。マオリの人達の挨拶は1・握手、2・お辞儀、3・鼻と鼻を擦り合わせる、と段階踏んだ少々面倒って言ったらアレですが、やや複雑なものらしいですね。

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深呼吸して生命の息吹を共有するらしい

一方、我ら日本人の挨拶って言ったら、朝なら「おはようございます(^^)」、これだけじゃない。その単純な挨拶出来ないほど多忙っつーことは、うんこしてもケツ拭く時間ないってレベルだろ。汚ないからこっち来んな!そんなわけないケツくらい拭くに決まってるって?

じゃ〜あ挨拶くらいし・ろ・よ!

 

ここの看護師にとって実習生とは、クレしんで言うとネネちゃんのママのうさぎのぬいぐるみだった。

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高校卒業したてのピュアな少女達は、ポロポロ綺麗な涙流しながら

「でも、間違ったことは言われてないから。ちゃんとした指導だから。私が全然出来ないのが悪いんだ…。」

と少女マンガのトーンで自身に言い聞かせるように呟いていたが、馬鹿な。自分は絶対にそんな風には思わなかった。

 

大体において実習生に辛く当たる看護師は陰気臭い醜女ばかりだし、素直で可愛い顔立ちの実習生だけ狙ってやってるから捻くれた劣等感がダダ漏れだし、院外で偶然見かけたら私服が母ちゃんがジャスコで買ってきたやつみたいにクソほどダサかったりする。

逆に感じ良い穏やかな看護師はやっぱ美人が多いし、そうでなくても表情が明るくて愛嬌があると言うか、あんまこんな言葉使いたくないがまぁリア充って感じだし、既に結婚してる人も多かった。

結局、仕事でも私生活でもパッとしねーから自分より弱い人間虐めて楽しんでんだよ。日々の鬱憤を、実習生のメンタルをストIIのボーナスステージよろしくボッコボコに破壊することで晴らしてるだけなの。

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だから「私が至らないせいで…」なんて殊勝なこと言わんで、単純に「あのクソアマ、外で会ったらぶん殴ってやる!」くらい言おうや。な!

 

 

 

大学ん時にバイトしてた下町のパチンコ屋。全然繁盛してなくて客は近所の爺さん婆さんばかり、暇すぎて苦痛だった。自分はパチンコが大嫌いなのであるが、給料は良いので「汚い金でも蔵は建つ」といった気持ちで働いていた。

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あるでよ!

入り口横でボーっとしながらただ時が経つのを待ち、当たりが出たらドル箱交換に行く。たまに玉詰まりがあると、盤の鍵開けて直した後サービスで玉を2、3個くらいヘソのとこに入れてやってお互いニッコリ。台をワニワニパニックかなんかと勘違いしてバカスカ叩いてるIQマイナス100の奴をセイセイセイセイ!と制止し、「全然出ないんだけど!」と文句言ってくる奴には(出るって言ってねえし、簡単に金が増えるゲームあったらこっちが知りたいわボケナス)と思いながらも「なんでですかね〜、アレ〜おっかしいな〜」とかヘラヘラ言いながら距離空けてってゆっくりフェイドアウトする。

これだけ。

 

この仕事ってなんなんですか。何の意味があるんですか。仕事なんて結局は犯行動機と一緒で遊ぶ金欲しさからやるもんであり、楽であればあるほど良いじゃん何が「やりがい」かねそんなもん窓からぶん投げて駄犬に食わせちまえと普段は思っているのだが、ここまで生産性のない業務内容だと、それはそれで辛いものがあった。ネガティブなことばかり考えてしまう。

 

世の中には色んな考えを持った人がいて、一人一人がそれぞれの信念に従って生きているわけで、誰かを頭ごなしに否定してしまうのは自分の世界を狭めることにもなるわけでして、それは勿体ないなと感じるしウィアーザワールドの精神で出来るだけ受容していこうと心掛けています。一応。

が、パチンコ屋の店員って独特過ぎる人が多いんだよな。バイト先がパチンコ屋なのにプライベートでもパチンコしかしてないし、話すことの9割がパチンコ関連で残り1割が風俗とか女関連、あとは立ち読みした実話ナックルズ仕入れてきたであろうゲスいゴシップ。いい加減にして欲しい。

 

特に昼勤のオッさん。今時珍しい中卒で、まぁ中卒なのは別にどうでもいいけど、前歯4本全部無いってどういうこと?シンナーなの?そのせいか知らんけどマンガだったら紫色のモヤで表現されるような邪悪な口臭で、流石のマオリだって挨拶拒否しますよ。オッさんの生命の息吹は激臭ウンコ臭。自覚もあるのか話すとき必ず口元を軽く手で覆うんだが、それ全然意味無いっスから。

犬歯しか残ってないから笑うとパーティグッズのドラキュラの歯に見えるし、モルボルみたいな口臭も相まってパチンコ屋に住み着く哀れな怪物って感じだった。

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オペラ座の怪人ノートルダムのせむし男はその容姿に反して美しい心を持っていたが、パチンコ屋の怪物の心は容姿そのままに醜い(アグリー)の一言。

ラブホテルで受付に料金間違われて請求されたからってツレの女(どんな女だよ)の前でガチ切れして、エントランスに置いてあった観葉植物の鉢を蹴りまくって粉々にしたとかいう話、それって武勇伝なの?相手にどんなリアクション求めてんの?ツレの女って、彼女みたいに言ってるけど鶯谷あたりから派遣されてる女だろ多分。

 というか、暇だからって仕事中にする話かよ。何の脈絡もなくそんな話聞かされて、愛想笑いしながら「はは…凄いっスね」としか言えなかった自分が憎い。こんなモンスターからパチンコ屋の業務を教わっている自分が大嫌いだ。

 

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西原理恵子の「ぼくんち」で、こういちくんが昔南の島から売られてきた女の子が逃げ出さないようにドアの前で見張る仕事をしていて、勤務中いつも背中のドア越しに女の子の泣き声が聞こえてくるのが嫌で嫌で、

「これは最低の仕事だ。そう思ったら自分のことがとてもキライになって、自分をケイベツしちゃうんだ。」

と。その気持ち、痛いほど分かります。

 

もし自分が王様だったら、この世にある全てのパチンコ屋にデカい鉄球を思い切りぶつけて取り潰し、跡地には寺を建立して客と従業員は年齢性別関係無く剃髪して出家させる。

出先で腹壊したときはパチンコ屋のトイレを公衆便所代わりにしててそのことだけはマジでサンキュ!だったが、だからといって惜しむ気持ちは全くない。寺でも快く貸してくれるだろうし無問題(モウマンタイ)っしょ。

 

 

 

S医療センター呼吸器外科病棟と下町のパチンコ屋。

「どんな経験も自分の糧となる」みたいな言葉どっかで聞いたが、絶対なってないと断言できる。
アレよりはマシだなって思うと現状を前向きに肯定出来るし、そういう意味では役に立ってるのかもしれない。とは言ってもバナナ入れるケースくらいのお役立ち度なんで、そんなもんやっぱり要らんわな。タダでも要らない。邪魔なだけだから。終

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見れば見るほど要らねー

 

ふるさとの煮こごり

地方出身者が上京すると、地元の田舎っぷりを説明する機会が何度もある。

もう卑屈を絵に描いたような顔して嬉々として語っちゃうようなとこある。

特に東北生まれなんて田舎者の代表で、ハァ〜テレビもねぇ!ラジオもねぇ!オラこんな村イヤだ〜の吉幾三の世界から来たと思われてるのをひしひしと感じるし実際それに近いのでこれはもう逆に開き直るしかないわけ。

田舎者でござい!てね。

東京の大部分は地方出身者が占めているので、出身地を言った途端に一番の田舎者は誰かを決める戦いが始まりがち。俺のが田舎だイヤイヤ俺のが俺のが、と。勝者不在の戦い。今夜も都内のほぼ全ての居酒屋で繰り広げられていることでしょう。

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やれ下北沢だ中目黒だ表参道だ、古本買うなら神保町、日本の九龍城中野ブロードウェイ、吉祥寺と言えばいせやでしょ、あとは俺意外と巣鴨とか和むんだよね〜とげぬき地蔵近くのあのカレーうどん屋さん知ってる?みたいに都会ぶっても、所詮は王様のブランチ頼りの付け焼き刃。逆に変に詳しいとこがモロ田舎者ということに気付かないのも、上京して1、2年目の地方出身者が陥りがちなあるあるだと思う。青っ洟垂らして都庁見上げてた上京当初の戸惑いが薄れてくると、なんか東京の街を語りたくなってしまう。とんねるずマツコ・デラックスみたいに。

この時期、地元の友人に見間違うようなスーツ着た僕を見てくれとばかりに(©︎木綿のハンカチーフ)東京風吹かして嫌われる奴も少なからずいるのではないだろうか。

 

       木綿のハンカチーフ

 

       恋人よ ぼくは旅立つ
  東へと向かう列車で
  はなやいだ街で君への贈りもの
  探す 探すつもりだ
  いいえ あなた 私は
  欲しいものはないのよ
  ただ都会の絵の具に
  染まらないで帰って
 

       恋人よ 半年が過ぎ
  逢えないが泣かないでくれ
  都会で流行の指輪を送るよ
  君に 君に似合うはずだ
  いいえ 星のダイヤも
  海に眠る 真珠も
  きっと あなたのキスほど
  きらめくはずないもの

 

       恋人よ いまも素顔で
  口紅もつけないままか
  見間違うようなスーツ着たぼくの
  写真 写真を見てくれ
  いいえ 草にねころぶ
  あなたが好きだったの
  でも 木枯らしのビル街
  からだに気をつけてね

 

       恋人よ 君を忘れて
  変わってくぼくを許して
  毎日愉快に過ごす街角
  ぼくは ぼくは帰れない
  あなた 最後のわがまま
  贈りものをねだるわ
  ねえ 涙拭く木綿の
  ハンカチーフください 

youtu.be

そんなメッキも5年10年住んでりゃ東京砂漠なんて……と失望することもしばしばありーので綺麗さっぱり剥がれ落ち、木綿のハンカチーフの彼だって居酒屋でヒヒヒと卑屈に笑いながら話すくらいには田舎出身のアイデンティティを受容出来るようになるだろう。

 

 

で、どうやって地元の田舎っぷりを知らしめるか。

まぁよくあるのがバスとか電車の本数。シンプルだけど破壊力ある。

1時間に一本なんて普通だし想像つくが、これが半日に一本だったらええ⁉︎って声出る。不便過ぎない⁉︎って。不思議なもんでそんなもんそもそも通ってないって言われるより、半日に一本しか来ないって言われた方が不便さ際立つ。

何時と何時に来んの?誰が乗ってんの?乗り遅れたらどうすんの?

乗り遅れたらその日はもう終わり!と堂々と答える田舎者の得意顔が眼に浮かぶ。

 

次は店の少なさ自慢。マック吉牛スタバ無いの当たり前、最寄りのコンビニまで車で20分とかラーメン屋なんて国道沿いのラーメンショップだけとかジャスコしかねぇのにそのジャスコ潰れたとか、話は尽きない。

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全く余談だが自分が初めてスタバに入ったのは高校3年生の夏、仙台市で。看板に大きく書いてあった抹茶フラペチーノをオーダーして一気飲みした後、帰りの車の中でめちゃくちゃ腹を下した。

もうちょっとだ、頑張れ(家まで)!と運転する母から立ち会い出産さながらの励ましを受けつつ、信号に引っかかる度に最早これまで……と絶望の唸り声を上げたのを覚えている。結果ギリセーフだったが、フラペチーノを飲んだのはその時だけである。お腹壊すからもう飲まないし煙草吸えないから自分からはスタバに入らない。

 

 

 

話戻って

自分はいつも高校時代の友人加藤の話をする。正確に言うと加藤家の話。

加藤んちは山ん中で自動車整備業をしてて、山超えて高校まで通うの大変だから町の方に下宿していた。町の方っつっても相当田舎だから、そっからチャリ乗って電車乗ってまたチャリ乗ってのチャリ二台使いで高校通わなきゃならんから、山よりはマシってだけで決して楽ではない。

加藤は平日は下宿先から高校通って、週末になると山に帰る生活をしていた。自分は週明けに加藤から聞く実家の話が大好きだった。

 

加藤の母ちゃんは実家がおしん並みにめちゃくちゃ貧乏だったらしく、どのくらい困窮していたかと言うと、虫歯になっても歯医者に行けず20代で総入れ歯になってしまったそうである。

高校卒業してすぐにお見合いをしまくって結婚相手を探したがなかなか思うようにいかず、何十回目だかで疲れ果てた末、本当に適当に加藤の父ちゃんと結婚を決めたらしい。別にどこが気に入ったとかじゃなく、マジでどうにでもなれって感じだったんだと。でもまぁ加藤含め弟妹と3人産んでんだから、夫婦仲も悪くはないだろうしそれなりに幸せなんだろう。

加藤の母ちゃんは酒が好きだ。加藤が子供の頃、母ちゃん麓の居酒屋で泥酔してんにも関わらず車で帰るって聞かなくて、ただでさえ運転し難い山道のガードレール突っ切りそうになり、助手席の加藤はマジで走馬灯見たらしい。

 

加藤の父ちゃんは自動車整備業の傍ら、趣味で猟師をしている。

冬、加藤が狐の襟巻きして登校したことがあって、イヤイヤなんでだよ制服に狐の襟巻きって意味分からんクロロのコスプレ失敗したみたいじゃないかと思って聞いてみると、父ちゃんが獲ってきたと言う。

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「へー凄えじゃん!売りもんみたいだわ、猟銃とかで獲んの?」

「いや、手で」

「?……あ、罠仕掛けとくとか?」

「違う違う、手で。ゆっくり近付いて」

つまり、狐を見つけたらただ息を殺して近付いていき、素手で捕まえるらしい。そんで、狐って口先が尖ってるじゃない、そこを口で咥えて窒息死させてから毛皮を取るんだと。

同じクラスの奴から、やはり父ちゃんが猟をやってて雉を撃って母ちゃんが車庫でそれ捌いて雉鍋にして食ったって話聞いたことあるが、口で咥えてって……。絶対駄目だろ。知らんけど、エキノコックス?そういうの大丈夫なのかね。

野生動物って、ただ息殺して近付いてって獲れるもの?音とか気配に凄く敏感なんじゃないか。ゴールデンカムイでも罠使って獲ってたぞ(当時連載してないが)。

「父ちゃん、去年はこの方法で3匹狐を獲った。2匹は襟巻きにして、1匹は帽子にして禿げのオッチャンにあげた。父ちゃんの毛皮は(銃を使わないから)穴が空いてなくて評判が良い」

誇らしげな加藤の顔に父への尊敬の念が見て取れたので、何も言えなかった。

自分は1度も加藤の父ちゃんに会ったことないが、うちの母親は挨拶したことがあるらしい。狐猟の話をすると、

「あの父ちゃん、サンカの子孫かなんかじゃないか」サンカ - Wikipedia

と言っていた。

いやサンカだって多分そんな風にして狐獲らないだろと思った。

 

 加藤には一つ下のまぁまぁイケメンだがマジで頭悪いタカユキっつー弟がいる。田舎もんでまぁまぁイケメンでマジで頭悪いっていったらこれはもう役満で非行待った無し。至極自然の流れなのだが、タカユキが万引きだか喫煙だが窃盗(チャリ)だかで補導された後に謝りもせず、心の一つも分かりあえない大人たちを睨む尾崎豊の態度で不貞腐れてたのが父ちゃんの逆鱗に触れた。

おだってんじゃねーぞテメェ!(※おだつ=調子にのる、ふざける)と神輿みたいに家族全員でタカユキを担ぎ上げ、そーれっと実家の裏の川に放り込んだらしい。

そしたらタカユキ、ちょっと川に流されちゃって。命の危機を感じたのか「ごめんなさーい‼︎」って皆に謝り、助け出された後大声上げて男泣きに泣いたらしい。

タカユキは面接の時に「もんぶりょうどう(文武両道)を目指します!」って言ったのに合格したくらいの地元で1番のバカ高校に部活動推薦で入学した。本当に良かった。

 

末の妹のコズエは家族全員から溺愛されており、好きなだけ菓子を買い与えられているせいでわんぱく相撲やってる子供クラスには太っているそうだ。

高校卒業後、自分のアパートに加藤が訪ねて来てくれて、手料理を振る舞ってくれたことがある。共働きの両親に代わって夕食を作ることがあるらしく、手際よく何品か作ってくれた。嬉しかったし感心したが、

「これ妹の大好物なんだ」

と作ってくれたのがザーサイのラー油炒めだったので滅茶苦茶笑ってしまった。

 お前の妹は猪八戒か(イメージ)。

 

 

とまぁ、ジャスコ釧路店のインパクトには遠く及ばないが、都会的なエピソードが一つもない加藤家は自分の田舎の雰囲気を体現したような一家である。地元の人間達を寸胴鍋でコトコト1週間煮込んで出来上がったブリっブリの煮凝りが加藤家なのだ。

よく噛んで味わってくれ。これが我が故郷(ふるさと)の味なのだから。

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周りに民家がなくて孤独だった幼少期の加藤は、よく近所の墓地で一人で遊んでいた。遊ぶと言っても、ジェリー藤尾の「遠くへ行きたい」を歌いながら(好きすぎて自分が作詩作曲したと思い込んでいたらしい)、薬草を拾い集めるだけだったそうだ。加藤の住んでいた地区はちょっと前まで土葬の慣習が残っていて、そのせいか薬草が沢山採れたらしい(人肉肥料?)。

当時から理系だった加藤は、高校卒業後はある難関医療系学校への進学を希望していたが敢え無く不合格。敢え無くというか、チンダル現象と聞いてチンポが樽に目一杯詰まった自作絵を授業中に見せてきたような不真面目な奴なので、不合格も宜なるかなといった感じだが。

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本当はこのように美しいチンダル現象

 

 初代iPhoneが発売された頃、数年ぶりに加藤から「仕事を辞めて中国に行く」と連絡があり、その後は音信不通になってしまった。

元気にやってると良いな。また実家の話聞かせて欲しい。 

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地元では原発事故のせいで牛馬のみならずなんと駝鳥までもが野生化してるらしいが、加藤の父ちゃん捕まえて鞄とかにしてたら面白いな(オーストリッチって駝鳥だったよな確か)。終

 

 

 

 

youtu.be

あなたも少しは耳をすませば

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昔はそんなでもなかった。

別に冒険するでもないし中学生が惚れた腫れたやってるだけの少女漫画じゃん一回見りゃいいっしょ、さてラピュタ見よ〜、と。

クソガキの目には聖司と雫の純粋さが尊く映らない。しかし年取ると、若い子が泣いたり笑ったりして頑張ってる姿見るだけで簡単に泣けるようになる。眩しすぎて直視できない。

 

聖司なんか前から狙ってたスケと家で2人きりだっていうのに、1人でバイオリン作っちゃってんの。

そんな中学生おるかよ?

自分が通ってた中学なんて近くの公園で生徒が青姦しとったぞ。家が近所だったから昔よく一緒に遊んだ一個上のミカちゃん(つちやかおり似で可愛い)、学校指定のくそダサジャージのままバックでやってんのを同じクラスの奴が目撃したんだぞ。せめて家でやってよ犬じゃねんだから。

人間だもの、外では手マン程度で我慢しといて! 

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田舎では可愛い子から順にヤンキーに容赦なく食われ、ズベ公待った無しの未来が待っている。そんで漏れなくヤンキーは町で唯一の娯楽(パチンコ)にうつつを抜かすので、可愛い子はシングルマザーになって成人式に子供連れて来たりする。

小学生の時は皆で田圃でイナゴ取ったりしてたのに、ほんの数年でエフェクトかかりすぎる。せめて高校入るまではアンプラグドでやって欲しい。はっぴぃえんど歌ってて欲しい。

youtu.be

 

手マンで思い出したが、高校の時学校サボって友人と一緒にチャリでシーズンオフの海水浴場に行き、寄せては返す波に向かって女性器の俗称を大声で叫んだり、砂浜に女性器のマークを描いてそれが波に消されるのを見て爆笑したりと、今となっては何が面白かったのか全く理解できないが、とにかく最低な時間を過ごしたことがある。

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ああ波が来る、消えちゃう消えちゃう!頑張れま◯こ!あ〜駄目だぁ〜ギャハハ!

その帰り、海水浴場の駐車場で、汚い20代のカップルが軽トラの荷台で手マンしてるのを見た。

驚いて友人におい!あれって……と大声出した為に男の方と目が合っちゃって、咄嗟に会釈してしまった(なんで?)。手マンご苦労様です、みたいになった。

人のこと言えないが、ウィークデイの昼間に屋外で何やってんだよ。国道沿いにラブホテルいくらでもあるだろ。軽トラの荷台はダブルベッドの代わりにはなり得ない。会釈返してくれなかったし死ねばいいと思った。

田舎の性事情を象徴するような、何もかもが最低な光景だった。

 

 

 

そんな乱れきった性の坩堝の中で育ってきた自分にとって、聖司と雫は完全にファンタジーなのである。舞台となった聖蹟桜ヶ丘って地名からしてもう、ライトノベル読んでる中2が考えた金持ちばっか通うミッションスクールかよ。

ミカちゃんが公園で立ちバックきめてた一方、聖司と雫は前戯どころかキスすらしてないんですよ。

終盤、聖司が早朝に人気のない丘みたいなとこに雫を連れ出すんだが、田舎だとこれはもう完っ全にセックス目的です。しかし聖蹟桜ヶ丘では違う。

朝日見ながらプロポーズする目的なんです。 

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2人の関係は大人が子供に求める男女交際の理想形だからして、大人だけが楽しめるファンタジーなのだなと思う。田舎のクソガキ達には決して響かない。しゃぼくれた大人が、こんな最高の青春送りたかった……と虚しく過ぎた日々を思い涙するために作られた映画なのである。2人を通して失われた、いや元々持ち合わせていなかった純粋さに触れることができる。

 

ナニワ金融道とか闇金ウシジマくんとか面白いし好きなのだが、読むとこの世には悪しかないこんな世界は滅ぶべきだみたいな荒んだ思考になってしまう。でもその後耳すま観ると中和されるから便利。

 

以前、最高にうまいモツ焼き食って良い気分の時に、ツレから実はさ……と30過ぎて出会い系にハマりアプリで◯△✖️◇、避妊せず◇◯△◯、だから金が△◯✖️という地獄みたいな話を聞かされた。

今その話する?しかもカウンター席しかないこんな狭い店で?モツ焼きが台無し!と一気に井戸の底に落とされた気分になったが、家帰ってすぐ耳すま観て事なきを得た。

本当に助かっている。