わたしは貝になれない

人生の偏差値50

きみはコンビニの妖精

新居決める時に、最寄りのコンビニまでどのくらいかかるかってのは重要です。

特に自分のように呪われた人間は、深夜に煙草が切れてるのに気付いてハァ面倒だけど買いに行くかと重い腰上げて自販機まで行って財布開いてみたら万札しか無かったとかそういや飲み屋でアイツにtaspo貸したけど返ってきてねーじゃん!とかよくあるんで。

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夜の止まり木

別に喫煙しなくても夜中にからあげくん食べたくなったり今日まで払わんとガス止められるとか切羽詰まったり詰まらなかったりする理由で、本当にコンビニ様にはお世話になっています。

とてもじゃないけど、足向けて寝れませんね。

 

自分の中で一番好きなコンビニはセブンイレブンなのであるが、と言うのも今はもう無い実家の最寄り(チャリ全力立ち漕ぎ15分)のコンビニが国道沿いのセブンイレブンだったのでヒヨコのインプリンティング的に一番好きってだけで、結局は何でも良いんです。近いとこにあるコンビニがその時一番好きなコンビニになる。

デイリーヤマザキだって自分は全然構わない。田舎のデイリー入ると、ロリ+ハードSMというかなり読者層が限られる系統の成人指定漫画をまるでバガボンド売るみたいな気軽さで陳列棚に置いてたりするから度肝抜かれるのだが、店主の歪んだ性嗜好は脇に置いといて、「他店に無いものを!」という気概だけは強く感じられるので。頑張って。

 

 

 

「あなた、コンビニが好きなんだね!しょっちゅう行ってるもんね。」

学生時代、ある女性から言われた。

学校の目の前にあるもんだから空き講義の時間とかにまるソー(まるごとソーセージ)買いに行ったりするくらいで、一般的な利用率なのだが…と少々面食らっていると、

「私は買い物は殆どスーパーで済ますから、滅多にコンビニに行かないんだ。」

と言う。堅実ですね。いつも水筒持参してるし。実家が資産家らしいのに、しっかりした金銭感覚を持っている。

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学生の味方

そんな彼女が珍しく足繁くコンビニ通ってる時期があったので理由を聞いてみると、ビックリマンチョコの復刻版を買いに行くと言う。小さい頃テレビでやってたビックリマンがめちゃ好きだったそうで、

ヘッドロココ様のシールが出るまで買うの!」

と鼻息荒い。ヘッドロココ様って何のこっちゃだけど、可愛いとこあるじゃない。

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ヘッドロココ/聖フェニックス - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

変身する以前の名前は『聖フェニックス』悪魔の攻撃による荒廃により、次界を目指す意識が生まれる中で『天聖界』に誕生した、次界創造主と呼ばれる新たなヘッドだった。」

(調べてみてもなんのこっちゃでした)

 

常に化粧気がなく地味な眼鏡をかけ四角い額丸出しのひっつめ髪で、簡単に言うと原発反対デモでプラカード掲げてそうな見た目なのだか、それを差し引いても良い奥さんになれるだろうなと思ったし、実際卒業してすぐになんと交際3ヶ月のスピード結婚していた。写真見せてもらったら、木野花から黒木華に変身した彼女がウェディングドレス着て最高の笑顔してたので、良かったね!と本心から思った。

交流ないから分からんけど、今頃子ども一人二人くらい産んでるだろうな。セブンで言うところのとろりんシューみたいな、所謂限定スイーツを子どもから強請られることも時にはあるだろうし、今は渋々コンビニへ行ったりしてるのかもしれない。

 

どんな話の流れだったか忘れたが

「私、ニコ中だから〜」

って彼女が言ったのでふぅん意外タバコ吸うんだねと思ってたら、ニコ中ってニコチン中毒の略じゃなくてニコニコ動画中毒の略だと卒業後に知って、数年越しのアハ体験した。余談。

 

 

 

 

以前住んでた中野のアパートの最寄りのコンビニ、新居周辺を散策していて見つけた時はセブンじゃなかったなーんだ…とほんの少しがっかりしてしまったのだが、すぐ大好きになった。

徒歩10分もかからずに行けて勿論24時間営業で酒もタバコも扱ってるし、何よりここには可愛くて感じの良いてらいさん(仮名)って店員がいる。

 

てらいさんは宝生舞に似てて眉毛に強い意志が感じられる美人だ。なのに声が少し舌足らずなとこがアンバランスな魅力を醸してて、長年コンビニバイトしてるのかレジ捌きも早いし最高だったのだが、滅茶苦茶話しかけてくるタイプの店員だった。

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初めててらいさんを見た時も、野球部っぽい坊主の中学生に

「これ(アメリカンドッグ)いつも買ってますよね〜。大好きなんですね!」

と話しかけていた。止めてあげて欲しい。

「あ、はい…。」

って中学生も恥ずかしそうにしてっから。いつもアメリカンドッグ部活帰りに(多分)食ってるのを知られちゃってて剰えそのことに人前で言及されてしまうなんて、大人なら別に気にしないけどそういうどうでも良い事に拘泥して羞恥心感じてしまうのが思春期の常だから。でもてらいさんはそんな空気決して読まない。声もめちゃデカい。無邪気の人である。

もしかして中学生と知り合いなのかと思ったが、何度か通ううちに単にそういう人なんだと分かった。

 

「今日はお仕事休みなんですか?」

「今、雪降ってますか?」

「今日はビール買わないんですね!」

美容院ばりに話しかけてくるしビールについてはやかましいわという感じだが、笑顔に邪気がなくて憎めない。

「その財布カッコいいですね〜」

と言われた時は数日前に財布を新調したばかりだったので、よく見てんな…と少しゾッとはしたものの、格好良いと言われて悪い気はしなかったので、ありがとうと伝えた。

 

またある日、会計がちょうど777円になって、お、と思っていると

「ゾロ目でーす。」

と茶目っ気たっぷりに言われた。嘘だろ。可愛すぎる。

なんと返していいか見当付かなかったので本当だねの意を込めて笑うと、てらいさんも笑顔で頷いてくれた。心に残る平和な情景だった。

ここまで来るとてらいさんのピンフな接客にも慣れて、と言うかもう待ちわびてしまっている自分がいた。

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ゾロ目でーす

 

職場を退職するに伴い住民税か何かの振り込みをしなければならず、振り込み用紙握りしめて件のコンビニへイライラしながら向かい、レジで金払う段階になってなんでこんなに高額なんだよこれから何かと物入りなのに鶏ガラから鶏油搾り取るみたいな真似しやがって畜生!とイライラがピークになり、普段は絶対にしないのに

「やってらんないっすよ、こんな何万も税金取られて。」

と思わずボヤいてしまった。その時はてらいさんじゃなくて無愛想で仕事も激遅の恐らくオーナーの奥さんがレジやってたので、

「はぁ…そうですね…。」

と目も合わさずにコレよ。くそったれ。

突然知らんやつのどうしようもないボヤき聞かされて奥さんもキ◯ガイ来たと戸惑ったに違いないが、これがてらいさんだったら…と思いを馳せずにいられなかった。

 

当時のアパートは暗渠を整備した遊歩道沿いにあった。その遊歩道は新宿から杉並の方まで続いていて、中野から歩いてって高円寺入ると明らかに杉並区側の方が掃除も行き渡っていて綺麗なのが普段から不満だったのだが、振り込みした帰り道にその遊歩道歩いてると、どこに血税使ってやがるんだよと更なる怒りが湧いてきたのを覚えている。

あの時てらいさんに対応してもらってたら、もしかしたらこんな遣り場のない憤りを抱えて帰路につくこともなかったかもしれない。

いやどうだろう。それはそれ、これはこれ、かもしれない。

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引っ越してから一度だけ、件のコンビニの前を通りかかったことがあった。

てらいさんはいなかった。辞めたのかもしれないし、その日たまたま休みだっただけかもしれない。もしくはバックヤードで廃棄弁当食ってただけかも。

別にあのコンビニはオーナー夫婦が感じ悪いから辞めてても良いけど、どっかのコンビニで元気に働いてて欲しいな。

 

きみときみが働くコンビニに幸あれ。