わたしは貝になれない

人生の偏差値50

何のために生まれたのか

うまいもん食べるために生まれてきた。稀代の食いしん坊である。

パネルクイズアタック25を毎週視聴しているのだが、飲食についての問題は誰よりも早く答えられる。人一倍、食への関心が強い自負がある。しかし、グルメではない。何食っても大抵うまいと思うが故に、生まれてこのかたずっと太っている。

 

 

幼稚園の頃。

法事か何かの折、親戚一同と共に洋食屋に入った。地元でレストランと言うとファミレスのココスくらいしかなかったので、ちゃんとしたレストランは多分生まれて初めてだったんじゃないかと思う。

「オムライスにしたら?美味しいよ」

と勧められるがまま初めて食べたオムライスに、腰抜かすほどの衝撃を覚えた。当時は食に保守的な祖父母と同居していたからか、子供向けのメニューが食卓にあがることは滅多になかった。そこへ来ていきなりど真ん中の味覚を与えられたので、国境超えて保護された脱北者が南で生まれて初めて銀シャリ食った時みたいに(想像)、脇目も振らず貪った。

何これ⁉︎こんな美味しいものがこの世にあったのか⁉︎

自分がずっと追い求めていた、究極の味がここにある……みたいな、美味しんぼだったらこの日が最終話だった。

そして、この日を境にオムライスが好きな食べ物No. 1になり、夕飯何がいいかと問われた時は常にオムライスと答えたし、遠足の時にも毎回リクエストして、おかずゼロで弁当箱の限界までパンパンに詰められて蓋の裏側がケチャップでべちょべちょになってても満足だった。

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あんなに好きだったのに、今では年に1回食べるかな、ってぐらい食べなくなった。とは言っても嫌いになったわけでは決してなく、単にランキングが下がっただけ。オムライスはやはり子供味。とても美味しいが、大人になってしまった自分の舌には優し過ぎて物足りないのだ。

子供の頃に「コンピューターおばあちゃん」が一番好きだったからって、大人になっても通勤中に聴いてる奴いないと思う。まさか「自分が死んだ時に……」つって、葬式に流す曲としてリクエストもしないだろうし。だからごめんね。オムライスに罪はないが、人は変わっていくものだから。

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大人になって飲酒するようになると、癖の強いものほどうまいと感じるようになった。

生牡蠣レバ刺し蟹味噌ブルーチーズetc  これで飯を食えと言われたらいやちょっと……ってなるが、どれも酒には滅法合う。20歳くらいを境に頭の回転も運動機能も衰えていく一方らしく、実際身をもって感じてもいるのだが、これらをつまみに酒を飲むたびに、大人になってよかったなとしみじみ思う。

が、終電で静かに鞄の中にゲロを吐いたり(臭いですぐバレた)、ゼミ合宿で風呂に入った直後から朝まですっぱり記憶がなくなり、正気をなくして大虎になった自分の姿をビデオカメラで撮影されていたり(やめて!)、酒での失敗は数ある。

朝方吐き気我慢しながらシャワー浴びて、ああああもうイヤ!昨日の自分死ね死ね死ね死ね!もう絶対に飲まない!と決意することも一度や二度ではないが、今後も良い距離感を保ちつつ末永く酒とは付き合っていきたいと思っている。

 

自分は酒で失敗したときはいつもオマル・ハイヤーム著「ルバイヤート」を読むことにしている。

ルバイヤートを思いっきりざっくり説明すると、どうせみんな死ぬし死んだ後のことなんか誰にも分かんないんだから、しきたりや戒律に縛られず、酒飲んでパーティでもして、今を楽しもうぜ!みたいな詩が大半を占めている。

 

酒を飲め   それこそ永遠の生命だ   また青春の唯一のしるしだ  

花と酒   君も浮かれる春の季節に   楽しめ一瞬を   それこそ真の人生だ!

 

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以前まったく下戸の人にルバイヤートを貸したら「うーん、ちょっと分からなかった(>_<)」と言われてしまい、貸すんじゃなかったと後悔した。しかし自分のような人間にとっては正に免罪符というか、読んでると昨夜の醜態が遠くなっていき、罪悪感も薄れ、ま・いっか!今日も元気だ酒がうまい!みたいに開き直れる。

いま改めて言語化すると最低だなと思った。肝臓は大事にしていきたい。

 

 

 

地元には「ままどおる」という銘菓がある。

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自分は太ってるくせに甘いものは昔からちょっと苦手で、幼少の頃は特に生クリーム系の洋菓子の類は全然食べられなかった。誕生日の時などはささみフライを大量に作ってもらい、ケーキの代わりにしていたくらいだった。

小学生の頃、親から無理くり通わされていた書道教室でクリスマス会をやる機会があり、ケーキをホールではなくカットで購入するので一人づつ好きなものを教えてくれと講師に言われた。皆が嬉しそうに「チーズケーキ」やら「モンブラン」やら声をあげる中、あんまりケーキ好きじゃないからいらないです……と言うと、「嘘つけ!」とノータイムで皆から非難された。

いやいや嘘ついてどうすんの損じゃんか逆に何の意味があんの自分は誕生日の時だってささみフライを(以下略)と必死に訴えるが、ハンプティダンプティのような体型ではいかんせん説得力がなかった。多分講師も訴えを信用していなかったので、結局勝手にチョコレートケーキを注文されてしまった。

クリスマス会当日、ケーキを一口しか食べられず残していると「本当だったんだ……」という視線をみんなから感じたが、誰も謝ってくれなかった。だったら紛らわしい体型してんなよと思ったに違いない。逆の立場だったら自分だってそう思う。

 

話が逸れたが、そんな自分でも大好きな甘いお菓子、それが冒頭のままどおるである。

皮がふわっとしてて、中身はバターとミルク風味のしっとりした白餡。良い感じに和洋折衷な味わい。サイズ感も丁度で、茶受けにぴったり。しょっちゅう実家にあったし、昔からCMやってるしで、自分にとっては非常に馴染み深い菓子である。

上京してからも何度か母親にリクエストして送ってもらった。しかし、ままどおるはあまり日持ちしない。箱で貰うと賞味期限内に食べきれないので、職場に持っていくと

「あ、ままどおるだ。福島の人って、これ好きだよね〜」

と言われた。

え、好きだよねって、嫌いな人いんの?

今ならいや別にいるだろと思うが、そう言われるまで嫌いな人がいるなんて想像したことがなかったので、軽くショックだった。地元では、と言うか自分の周りでは嫌いな人は1人もいなかったと記憶している。確かに、福島の人ってこれが好きである。

 

だから、九州出身の人から帰省のお土産としていただいた「博多通りもん」を食べた時は、度肝抜かれた。似ている……しかし、よりクリーミーで口当たりよく、コクがありつつも軽い味わい。あくまで個人の感想だが、負けたと思った。

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また美味しんぼで例えると、鮎のてんぷら対決の時の京極万太郎の心境だった。

ままどおる食べた後が 

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だとすると、

博多通りもん食べた後が 

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こう。(カスって……)

 

 

しかし、ままどおる博多通りもんよりも優れていることがある。

それは入手のし易さ。博多通りもんは福岡近郊にしか売っておらず、アンテナショップ等にも置いていないのだ。

いくら美味しくても食べられないんじゃ仕方ねぇ、やっぱお前が一番だよ。結構どこでも売ってるもんな。美人と浮気してみて古女房の良さを再確認したみたいになるが、自分はこれからもままどおるの味方であり続けようと思っている。終